本文・参考文献の更新:
透析の説明を受けると、「いつから必要なのか」「今の仕事や生活はどう変わるのか」が気になると思います。腎機能の数値だけで開始日が決まるわけではありません。体調、検査の変化、ご本人の生活を確認しながら、治療方法と準備を相談します。
準備を始める時期と、治療を始める時期は違う
透析は、腎臓から十分に排出できなくなった老廃物や余分な水分を取り除く治療です。慢性腎不全では長期にわたる治療になることが多く、急性腎障害で一時的に行う透析とは経過が異なります。
実際の開始は、食欲低下などの尿毒症症状、治療で改善しにくい体液過剰や電解質異常、栄養状態、生活への影響を総合して判断します。IDEAL試験でも、数値を目安に計画的に早く透析を始める方法の生存上の優位性は示されませんでした。[1,3]
ただし、開始を待つことと準備をしないことは別です。治療の説明を聞く時間、通院先や支援の調整、シャントやカテーテルの準備には時間がかかります。
施設に通う血液透析
血液を体の外へ取り出し、ダイアライザーと呼ばれる装置を通して戻します。一般的には週3回、1回4〜5時間程度ですが、治療時間や方法は病状に合わせて決めます。
施設で医療者が治療を行う一方、通院のない日の服薬、食事、体重の変化も治療に関わります。通院手段や仕事の予定と合わせて、続けられる曜日・時間帯を相談します。針を刺す際の痛みや透析後の体調も、調整したいこととしてお伝えください。
自宅で行う腹膜透析
お腹に留置したカテーテルから透析液を入れ、自分の腹膜を使って老廃物などを取り除きます。手動で液を交換するCAPDと、主に就寝中に機械を使うAPDがあります。
通院は一般に月1〜2回程度ですが、自宅では交換操作やカテーテル出口部のケアを行います。清潔に作業できる場所や物品の保管場所を確保し、ご本人だけで難しい作業にどう対応するかも考えます。
腹膜炎などの合併症や、腹膜の働き、残っている腎機能、生活上の負担を定期的に確認します。血液透析との併用や移行を検討する場合もあり、一定の年数で必ず終えるという決め方ではありません。当院ではCAPD・APDともに相談できます。[2]
シャントは、普段との違いに気づくことが大切
血液透析で血液を取り出す経路を、バスキュラーアクセスといいます。自分の動脈と静脈をつなぐ内シャントのほか、人工血管やカテーテルを用いる場合があります。
内シャントでは、触れると振動(スリル)が伝わります。聴診器で聞く音はシャント音です。普段との違いを確かめ、振動が消えた、赤みや痛みがあるときは透析施設へ連絡してください。腕を締めつける衣服などによる圧迫を避け、重い荷物や運動の扱いは血管の状態に合わせて相談します。
治療方法を決めるときに話しておきたいこと
通院に使える時間、自宅でできる作業、仕事、ご家族の支援、治療で負担に感じることを医療者へ伝えてください。血液透析と腹膜透析のどちらがよいかは、医学的な条件と生活の両方から考えます。
腎移植も含めて選択肢を検討します。また、病状やご本人の希望によっては、透析を行わず症状緩和と生活支援を中心にする保存的腎臓療法について話し合う場合もあります。一度説明を聞いて決めきれなくても、質問を整理して相談を重ねられます。[1,4]
参考文献・一次資料
- KDIGO. 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of CKD. Kidney International. 2024;105(Suppl 4S):S117–S314.
- Brown EA, et al. ISPD practice recommendations: Prescribing high-quality goal-directed peritoneal dialysis. Perit Dial Int. 2020;40:244–253. DOI:10.1177/0896860819895364.
- Cooper BA, et al. A Randomized, Controlled Trial of Early versus Late Initiation of Dialysis. N Engl J Med. 2010;363:609–619. DOI:10.1056/NEJMoa1000552.
- 日本腎臓学会.CKD診療ガイド2024 第14章(保存的腎臓療法).